2008年4月 7日 (月)
入社式考
新年度、多くの会社で入社式が行われました。私が顔を出した会社での出来事をお話します。
その入社式では、社長のお話の後で配属先の各上司が一人ひとり挨拶をしました。私の顔なじみである「上司」も、胸を張って大きな声で言いました。「わが社は、皆さんがやりたいことを何でもしていただく会社です。新しい考えを常に抱いて、私たちに提案してください。」 実はこの彼、部下の扱いで悩んで私のところに相談にきていた上司です。カウンセリングルームでの悩ましげな風情は消え威風堂々、私は感心してしまいました。
彼の悩みとは大まかに言えこんなことでした。彼の部下である女性は勤めて年月の長いベテランです。たいていのことは彼女に聞けばわかるので部内でも尊敬されています。その部署に半年ほど前に中途で新人が入りました。この新人は前職で大変専門性の高い仕事をしており、それを見込まれて入社してきたのです。自分の能力にもそれなりのプライドがありました。しかしそんなことにはお構いなしに、先輩である彼女は彼に厳しい指導を行いました。彼女に言わせれば「あなた程度の人は私たちの会社には大勢居ます。謙虚に私の指導を受けて、頑張るように。」とのことで、以来、周囲が見ても褒めてもよい場面でも決して褒めず、見逃してもよいような瑣末なことでも細かく指摘をしているというのです。
「彼女の指導の内容は細かくて厳しいのですが決して間違っていませんし、彼女も『役割を果たしているだけです』と言うのですが、どうも見ていると彼の前職に対する嫉妬が混じっているとも思われるような冷たい態度なのです。」 転入社員の彼は顔色がだんだんと悪くなり会社を休みがちなのだと。「彼への指導を少し緩めるようにと言ったのですが、『では、私が意地悪で彼に厳しくしているとおっしゃるのでしょうか』と膨れるばかりで、言うことを聞きません。」 部下に優しいことが定評の所属長である彼は顔を曇らせるのでした。
そんな相談があった翌月の入社式、別人のように元気な彼の姿に私は目を見張ったのです。彼はロビイで休んでいる私のところにやってきてにこにこ明るく話しかけてきました。「先生、私の挨拶、どうでした? 今年の新人はなかなか優秀で私としても大いに期待しているのですよ。 」 私はちょっと間をおいて彼に聞きました。「○○さん、あなたは本当に新人がやりたいことを何でもさせるのですか?」 彼は怪訝そうに私の顔を見つめました。 まるで、自分がいつそんなことを言ったのか? とでも言いたげに。
続く
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コメント
こういうシチュエーション、ある、ある。と思いながら、読ませていただきました。続きが楽しみです。
投稿 まるりん | 2008年4月 8日 (火) 21時40分